History (その2) | 特殊メイクやマスクに興味を持ったきっかけから、現在に至るまでの経緯を紹介します |

ライフマスク作り

アプライエンスマスクを作ると言っても、まず始めに作製に必要な材料を一体どこで手に入れれば良いのか困惑した。「特殊メイクをやってみよう」と思っている人は結構少なくないはずなのに、なかなかその一歩が踏み出せないのは、まずこの段階でつまづいてしまう人が大多数だからではないかと自分では思っている。かくいう自分もめげそうになったが、取りあえずDIYの殿堂?東急ハンズに行ってみた。 すると、当時でも結構材料は手に入ってしまったのである。粘土、石膏、コピック(顔の型取剤)、スピリッツガム&リムーバー、そしてフォームラバーも3液混合タイプではあるが、国内メーカーの物が1500円程度で売っていた。ゴムの質感とかはお世辞にも良くは無かったが、1万円もかからずに取りあえずマスクを作るのに必要なものが、意外にも手に入ってしまったのである。 これだけ材料が揃えばやってみるしかなかった。しかし、やはり一番の難関が自分の顔型(ライフマスク)取り。さすがにこればかりはどうしようか散々悩んだ。ライフマスクの取り方自体(方法)は分かっていたのだが、それを一人で行うとなると難易度は格段に上がってしまう。 しかし、誰かに取ってもらうわけにもいかないので、やはり自分ひとりでやるしかなかった。結構危険が伴う事も覚悟しながら、とりあえず一人でチャレンジしてみた。確か一回目で奇跡的に失敗する事なくライフマスクを取れた時は結構感激したものだ(その後は2回位失敗した事あり)。


失敗の連続

次に、石膏で取ったライフマスクの上に粘土で彫刻をして行くのだが、これがまた最初の頃はひどいものだった。とりあえず怖いモンスター系の顔を作ったりしたのだが、正直どこの部分(目、鼻、口等)をどう変化させれば怖い顔になるのかが、全然分からなかった。 今思うと、いわば「顔」というものに初めて真剣に向き合った最初の出来事だったのかもしれないが、分からないなりにも、とにかく無我夢中で小学生以来の粘土細工に没頭して怖い顔を作っていった。完成したマスクを被ってモンスターに変身した自分の姿を想像しながら...。 しかし現実はそんなに甘くは無かった。とりあえず彫刻を終えて、石膏でマスクの型を作る段階でその悲劇は訪れた。何日もかかって仕上げたモンスター顔の粘土彫刻を石膏で覆い、固まったその石膏型を一旦剥がし、中の粘土を掻き出し、そこにできた空間にフォームラバーを流し込んでマスクは作られるのだが、この粘土彫刻の上で固まった石膏が、乾燥してから上手く剥がれないのだ(ライフマスク側の石膏とくっついてしまって剥がれない)。石膏が上手く剥がれるように、「カリ石鹸」とか剥離剤を塗っていたにもかかわらず石膏型が上手く剥がれない。本当に泣きそうになった。今思えば粘土で“土手”とかを作っていなかったのが原因なのだが、当時はそんな事はわからず、ただただ、泣く泣くマスクの石膏型を割って剥がした物だ。その後は失敗しては克服方法を調べ、なんとか石膏型を綺麗に外せるようになったのだが、またしても大きな壁が立ちふさがった。 それはフォームラバー焼き(乾燥)で、これまた失敗の連続だった....。

初期の頃の酷い失敗作品

ハンズで手に入れたフォームラバーには、今を思えば剥離剤がついてなかった事もあり、オーブンで焼き終わった後に焼きあがったマスクを取り出そうにも、これまたライフマスク側の石膏型と、マスク側の石膏型がくっつて剥がれてくれないために、何度となく型を割るハメになってしまった。マスク側の型を割ってでも、フォームが上手く焼けていれば少なくともひとつのマスクは手に入るのだが、これまたフォームの撹拌具合が少なかったり、焼いた温度が高すぎてゴムが焦げてしまったりして、ひとつのマスクさえなかなか手にする事ができない時期が続いた。 それはもう散々の状態だったが、極稀になんとか取り出せたマスクを着色しては、顔に貼り付けて鏡に映る自分の顔を眺める事はできるようになっていった。


キャラクターとしての完成度の低さ

その後もほんの少しずつではあったものの、マスク作りの技術も進歩していき、表情のあるマスクをなんとか作れるようになっていった。フォームラバーの素材もGMフォームになり、着色もラバーマスクグリースペイントを使うようになり、まだまだ未熟ではあったものの、マスク単体では、そこそこのものを作れるようになっていった。今思うと笑ってしまいそうだが、片目のゾンビマスクは自分にとっては当時かなりの傑作だったものだ(笑)。 マスクを何度も顔に被って自分の変わり果てた顔、別人となってしまった顔を見ては、「本当にこれが自分なの?」と問いかけ、口を開いて威嚇した表情を作っては、「暗闇やお化け屋敷で自分をみたら、みんな怖がるんだろうなあ」と想像したりしていた。 同じゾンビマスクでも、以前おもちゃ屋で購入したすっぽり被るマスクとは違い、マスクを肌に接着剤で貼りつけるアプライエンスマスクは、そのフォームラバーの伸縮性の高さと肌に吸付くようなフィット感で、なんとも言えないリアルな感覚、不思議な感覚を味わう事ができた。口を開けば鏡に映ったゾンビの口が動き、自分の顔の動きに連動して第二の皮膚であるゾンビの顔が動く。まさに本当に別人に変身した感覚になれるのだ。当時はもう正直本当に感動し、興奮しワクワクしたのを覚えている。しかし、人間感動も興奮も長くは続かないもので(^^;)、そのうち冷静に鏡に映るゾンビ顔をいろんな角度から見ては、完成度の低さに落胆してしまう事になる。

マスク単体だけでは無く、衣装や顔の側面、後頭部の処理が課題に.....

ここで言う完成度の低さとは、キャラクターへのなりきり度と言えばいいのだろうか、ようは顔の一部だけ覆ったマスク単体だけではそのキャラクターになりきったとは言えず、キャラクターになりきる為には、顔を別人に変えてしまうマスクの他にも、衣装(コスチューム)や場合によっては小道具などが必要だという事に気が付いたのである。 ましてやマスクの部分だけとってみても、自分の肌をマスクで覆える部分は顎の下の首あたりまでと、上は額のあたりまで、そして顔の横は耳のあたりまでしか覆えず、衣装もさることながら、これら露出してしまった顎の下の首回りや、耳の後ろの後頭部などの部分をどう隠すか(ごまかすか)という事が課題となった。




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